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長野県松本市内田山
 
 
自然と文化  

  景観の保全や社会生活の安全のために人が手を加えた山野を里山と呼ぶようです。とすれば、標高1100メートルを超える高原にある牛伏川上流部は「里山」と呼ぶことができます。
  山腹斜面の土砂崩壊や土石流を防ぐために石組みの斜面や階段流路をつくり、周囲の植生(森林相)をも変えてきました。こうして、牛伏川上流部の周囲の生態系は人の手を加えたものになっています。
  とはいえ、渓流河川はおとなしく人間に手なずけけられたわけでもなさそうです。数十万年以上のうちのわずか100年ちょっとの短い期間、人はこの渓谷と折り合いをつけただけにすぎないかもしれません。

    ▲夏の水遊びが楽しい流路。飛び石伝いに対岸と行き来できる。

■三号堰堤下から階段工まで■


▲平坦地を蛇行する「せせらぎ」

  源流部の山腹斜面への石張りや石組み水路、そして階段流路などの工夫は、降水による山肌の浸食と堆積による河床の上昇を防ぎ、土石流などの災害を回避するためのものです。
  河床や谷間に石張りを施すことで、流水が上流の河床や谷を削って土砂を運搬して下流にその土砂を堆積させる働きを回避するのです。大水で堆積した土砂が崩れ流れて下流に土石流となって奔流することを防ぐわけです。

  ところで、源流部の平坦地では窪みを流れる水路の水位は浅いので、橋は架けられません。浅瀬を横切る小径は水没してしまいます。そこで、落差のある下流部に簡易な木製の小橋を架けて対岸に渡る経路をつくっています。

◆平坦地の河床や斜面を保護◆

  こうして見てくると、上流部の安全のためには、階段状に連なる平坦地の間を結ぶ水路をどのように設計するかということが、決定的に重要な問題となることがわかります。
  してみると、上流部の地形や渓流の浸食・運搬・堆積作用について深く洞察することが求められるでしょう。
  というのも、地形に応じた流水の力の作用の向きや大きさを正確に見積もらないと、斜面や推理の傾斜のつけ方、曲げ方、滝の形状と落差を設計できませんから。

  張石水路と階段流路の実に見事なデザインは、自然――自然の力の働きに――対する深い敬愛と冷静な洞察の賜物です。これこそ人類の知恵!


▲流れの穏やかな場所には渡渉用飛び石が並んでいる。階段を下りて水遊びするのも楽しい。

◆水量の多い急傾斜水路の形状◆

  さて、渓谷を下っていくにつれていくつも支流が集まって、本流の水量がだんだん大きくなっていきます。当然、川幅と川縁の護岸の高低さ(深さ)は大きくなります。
  しかし、問題は水量が大きくなった急斜面でどのように流路を形づくるかです。そこに導入されたのが、石組の階段状の流路の形です。

  急傾斜の流れが長く続くと位置エネルギーが解放されて流速が増し、水流の破壊力も増していきます。そこで、階段状の石組みの滝をつくり水流を垂直に落下させて、水平方向の速度を失わせる必要が出てくるわけです。
  落下による力は石組みの滝壺河床が受け止めます。こうして、急傾斜を下ることによる加速を階段状の流路で大幅に減衰させていくのです。
  張石水路と階段流路の実に見事なデザインは、自然――自然の力の働きに――対する深い敬愛と冷静な洞察の賜物です。これこそ人類の知恵!


▲階段流路を下る水流

▲連続する階段を白く輝きながら水は落ちていく。

▲階段工の脇には遊歩道

▲遊歩道を歩きながら階段流路を眺める


平坦地の水路の周囲の樹林


合清水沢の石堰堤。まもなく本流に合流する。

合流地点には木製の橋が架かっている。

2号石堰堤とその下の人工滝

石積み護岸が階段状に重層している

堰堤で3メートルほどの高低差の滝ができる

流れの緩やかな河床には土砂が堆積

本流らしい流路になってきた

人の大きさと堰堤の大きさを比べると…

流路脇には遊歩道や橋が設えられている

この先は急斜面で階段流路となる

水の恵みのありがたさと美しさを味わう

松本めぐり歩き

フランス式階段流路の工法について

  • 牛伏川源流部の斜面工法から。
  • 階段流路の施工法までを説明。

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