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長野県塩尻市
 
 
山裾の名刹 西福寺


▲宝松山西福寺 山裾にある広々とした境内

  塩尻市の下西条地区は、旧中山道沿いにある大門神社の南に位置し、南西にある鳴雷山の長い尾根の裾野に広がる集落です。西隣には、縄文時代から平安時代かけての集落遺構が散在する平出遺跡群があります。
  太古からの長い歴史と文化の薫りが漂っているような、不思議な近郊田園地帯です。
  今回は、そんな地区の大らかな山懐に抱かれた禅寺、西福寺を訪ねてみます。

■住民が支える庶民的な禅寺■

  現在の西福寺の参道と境内は、ちょっぴり複雑な構造です。中央本線の鉄道高架橋梁を2つくぐることになるからです。
  そのため、よそから来た旅人や参詣者が寺にお参りしに来たときは、道に戸惑うかもしれません。現に私がそうでした。
  そこで、下西条に来たときは南に控える山裾を眺めてみましょう。すると西福寺堂宇の大きな入母屋屋根がひときわ高く聳えているのが見えます。そこに向かう参道を行けば、間違いなくこの禅寺に行き着きます。


▲地蔵堂と石灯籠、石塔

▲洞門アーチの先に山門がある

◆武田信玄が開基◆

  西福禅寺の前身は、1493年に裏山(上ノ山)の中腹の久野井という場所に創建された久能寺だとか。
  その92年後、武田信玄が松本の小笠原家を駆逐して信濃を攻略・統治したさい、この地にあらためて禅寺を開基したことから、久能寺6代目住持、圭嶽珠白禅師が寺を現在地に移設し、宝松山西福寺と寺号を改めて開山したそうです。
  信玄がこの地を重要視したのは、この裏山が東山道を眼下に扼しながら松本平から塩尻峠を見渡すことができる戦略的な管制高地となったからでしょう。
  中世からこの裏山にはいくつも城砦が築かれてきていて、この寺も武田家の居館跡に建立されたものと見られています。


▲どっしりした鐘楼

▲庵風の太子堂

◆境内の堂宇めぐり◆

  その昔、ここは領主の城館があっただけに、境内はじつに広大で開放感たっぷりです。そして境内に立つ堂宇や松もまたみごとなものです。

  まず境内中央の石畳の奥にある本堂。その大きさもさることながら、品格と安定感が漂っています。
  本堂の向かって右側には、これまた広壮な庫裏が並んでいます。本棟造りで妻入りの上には大きな雀踊り。いかにもこの地に似つかわしい風情の結構です。
  庫裏の脇には、この寺の山号を冠した建物、宝松閣が正面から裏山に向き合っています。この名称から見て、戦国末期の開山を担った圭嶽珠白禅師にゆかりのある文物を保管しているのではないでしょうか。
  そういえば境内の説明板によれば、開山禅師が師僧から継受した袈裟や出家作法状などが代々伝えられているそうですから、そういう寺宝が納められているのかもしれません。

  さて、目を境内の南端に転ずると永代供養堂があります。そこから道続きの高壇上には太子堂があって、お堂に登る石段が下の境内から続いています。
  太子堂の横には、本堂と回廊で結ばれた位牌堂が屹立しています。位牌堂の脇には、山裾斜面を利用して枯山水風の小庭園。裏山の自然と人為とが境界なく続いていくようです。


▲山から引いた清水が垂れる山水風景

◆裏山裾の庭園と奥庭◆

  位牌堂に続く渡り廊下の下には本堂裏に回る門があので、そこをくぐってみると、裏山と一体になった美しい庭園が視界に飛び込んできました。
  和尚さんの話では、熱心な檀家の人びとによって庭園が美しく保たれているのだとか。晩秋にここに出現するはずの紅葉錦繍がじつに楽しみです。
  本堂の北脇には奥庭庭園。そこには池があって、茶室風の建物とよく調和しています。檀家たちが集まりやすい環境ですね。


▲長屋門風の庫裏裏門


参道起点となっている冠木門 上は中央本線高架

アーチの向こうに山門がある

中央本線(伊那方面行き)の下をくぐる参道

六地蔵に迎えられながら山門をくぐる。山門脇には「不許葷酒入山門(葷酒山門に入るを許さず)」の警句石柱がある。


大きな本堂

伝統的な本棟造りの庫裏

山号つけた宝松閣

永代供養堂

太子堂は石段の上にある

境内の最奥には位牌堂がある

太子堂と位牌堂の間には枯山水風の庭園

本堂の裏には美しい植栽庭園がある

裏山斜面の裾は庭園と山林との融合の世界

本堂脇から裏庭に続く奥庭の池

晩秋の錦繍が楽しみだ


▲茶室風の建物。檀家の集会や行事に利用されるのだろうか。

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