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長野県木曽郡南木曽町吾妻大妻籠
 
  この写真は、古中山道の両脇に並ぶ神明集落です。じつは中央の小径が古い中山道で、Googleマップに表示されている「旧中山道」は明治以降のものです。車両を通行させるために、尾根下に新道を開いたのです。
  古い中山道を体験したいのなら、この杣道を往かなければなりません。この先、断崖の縁を往く幅の狭い坂道があって、尾根中腹を回り込む険路になるのです。

 
大妻籠北端の集落

  今回は、天空の集落から坂道を下って旅籠集落を経由して、来た道を戻ります。金剛屋の下の道をさらに下って、男垂川に架かる神明橋を渡った後、左に分岐する急な坂道をのぼります。小径をのぼり切ると、小径の両側に数件の古民家の家並みがあえいます。これが神明集落です。
  この小径こそが、江戸時代の中山道、つまり古中山道です。古中山道は、蘭川と男垂川との合流地に向かって東に張り出した尾根の中腹を回り込んで、蘭川を越える経路です。上り下りの激しい険路ですが、まさに山中の杣道としての古中山道を存分に堪能できる道です。
⇒馬籠峠歩き絵地図


▲崖のような急斜面なので、雨で敷地土砂や路肩が崩れないように石垣で補強してある。

▲尾根端の崖の縁を回り込む小径。木製のガードレールが好ましい。

  馬籠峠の終点に最も険しい杣道が待っていました。尾根の先端の崖の縁を回り込み、尾根から下り切って大妻橋まで来ると、それが馬籠峠の終点です。

神明集落は現在、Googleマップには掲載されていません。下の航空写真を拡大表示にして上方にスクロールすると、蛇行する「旧中山道」の左側の山中に家並みの屋根群が見えます。それが神明集落です。

■尾根縁に並ぶ古民家■

◆これが古中山道!◆

  その昔、馬籠峠の山中に分け入り、男滝と女滝を過ぎて石畳の小径を抜けた旅人は、庚申塚の脇を過ぎて男垂川を渡って大妻籠の集落に入りました。そして、旅籠「まるや」や「つたむら」「近江屋」の前の小径を通って、さらに再び神明橋で男垂川を渡って急坂をのぼり、神明集落を抜けて妻籠に向かったのです。


▲坂の上に住宅が見える

  神明橋の北側の袂から北にのぼる小径、じつはこれこそが古中山道の道筋で、大妻籠集落を経由して妻籠宿に向かう小径の入り口でした。往時は、幅2~3尺の杣道でした。

  ところで、この辺りの観光地図を見ると、中山道は少なくとも4通りに表記されています。
  一つ目は、県道7号を中山道と表記するもので、明治末期から昭和期にかけてに自動車通行のために開設した道路で、まだ国道制度もなかったので、以前の中山道の名称を継承したのです。その多くは現在、県道となっているようです。
  次は、男垂川の西岸を往く舗装した小径です。急坂を迂回したりして、荷車程度の車両を通行できるようにした尾根の麓の小径で、古中山道よりもずっと歩きやすくなった道です。ただし、男垂川の畔の道は、大雨が降ると川が危険なほどに増水したため、通れなかったかもしれません。
  三つ目は、江戸時代の中山道です。大妻籠では神明集落のなかを通る小径がそうです。
  以上の3つに加えて、国道制度ができてから中山道の名称を引き継いだ、木曾川沿いの道路(国道19号)があるので、中山道は4通りもあるのです。


▲新道の中山道の下を男垂川が流れる。

▲神明集落の東側は崖になっている

◆崖の上の神明集落◆

  さて、古中山道は神明集落を抜けると竹林を下る杣道になります。杣道は、尾根の東端を回り込んで、蘭川に架かる大妻橋に連絡しています。
  ところが、尾根の東端から北端にかけては、東側を男垂川が、北側を蘭川が山腹を削り取ってつくった切り立った崖になっています。
  この崖の上の高台に神明集落があります。時代を遡るほど、人びとは流水の破壊力からできるだけ遠ざかって集落や道を建設していました。尾根の中腹にあって男垂川のはるか上に位置する高台こそ、安心して住居を営むことができる場所だったのです。
  本来の神明集落は、木曾路に特有の平屋造りの古民家の集まりで、まさに崖の上の高台にへばりつくように並んでいます。その低い屋根を見ながらの散策は、心癒される時間となります。


▲谷の対岸にも杣道が見える

▲古街道から谷底の蘭川の流れを見おろす

  神明の家並みを過ぎると、古街道は竹林を少し下ったのち、崖のように切り立った尾根斜面を回り込んで蘭川の左岸に出ます、そこから杣道は下り坂になり、大妻橋まで続きます。
  ところで、この集落の北にそびえる尾根上には戦国時代末まで神明砦がありました。その時代には神明集落があったのかは不明です。⇒神明砦の探索


神明橋の袂から男垂川を見おろす

橋の北側の急坂をのぼって振り返る。

坂をのぼり切ると古民家が並ぶ集落がある

集落南端の二階建て民家はかつて民宿を営んでいたか

平屋造りの古民家が並ぶ(小径の東側)

古街道の両側に古民家が並ぶ。

集落の北端で来た道を振り返る

集落から下って杣道に入っていく

街道脇の石垣の擁壁

竹林を往く杣道

小径の右は崖で下を男垂川が流れる

道から見上げると、これまた崖

尾根の端を回り込んで下る

坂の右下が蘭川で、大妻橋が架かっている
 
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