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文法と哲学

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■文章や段落の設計を考える■

  以上のことを基礎として、ここからは、文章を書くにあたっての全体構造、大きな文脈の設計図を描く訓練にいきます。
  文節とか品詞とか、主語・修飾語というようなもっと小さな「文の部品」については、もう少しあとで考察します。

  文章はいくつもの部品から成り立っています。部品は、大きさはいろいろです。小さなものはたった1つの文からなります。また、複数の文からなる部品の場合もあるし、段落からなる場合もあるし、大きなものは「節」や「章」さらに「卷」からなるものもあります。とはいえ、原理原則は同じです。
  また、大きな部品は、そのなかに中規模あるいは小さな部品へと分解できます。
  文章を書く場合、はじめに大きな全体の構想ができあがっているときもあれば、より小さな部品を確実につくりあげていって、段々全体の構想が見えてくる場合もあります。

  要は、自分としてはこういう仕組み(組み立て)の文章をつくりたい、という明白なイメイジをもつことです。
  はじめは小さなブロックで完結させて、そのかぎりで、まとまりのよい文章・文脈を構成していくのがよいでしょう。やがて、大きな全体構想を設計する手法が身につくでしょう。
  たとえば、
@ 話題や問題をはじめに提示して、そのあと理由や根拠、原因となることがらを記述し、読み手を段階的に説得しながら、最後に結論や結果を示すという流れで文章を書こう。…これは《三段論法》ないし《起承転結》といわれる型。
  論理学で「三段論法」というのは、「AはBに等しい」⇒「BはCに等しい」⇒「したがって、AはCに等しい」という三段階の推論を進める方法を言いますが、ここでは、単に「問題や話題の提示」「説明」「結論」という構造を意味します。

A はじめに言いたい結論・結果をぶっつけて、読み手の注目を集め、そのあとで問題の構造や成り立ち、そしてなにより結論・結果を導いた理由や根拠、原因を説明していこう。…《倒叙》とか、《結論→説明》型というものです。ビジネス文書に多いタイプです。

B いや、面倒な理屈を並べるよりも、豊富な事例をあげていって、同じようにこの話題もこんな結末になるという流れにしたい。…《帰納》《例示》型

C 最初にさしあたっての(仮の)結論を示し、それを否定する根拠や事例を列挙していって、問題の考え方をひっくり返し、視点を変えて理由や根拠を説明して、新たな本当の結論を示したい。…《逆説》《反論提示》型

などの方法があります。

  ほかにも、文章=文脈の組み立て方法がありますが、今回はここまでにしておきます。

  実際、ある程度長い文章では、これらの組み立て方法をいくつも取り入れて、この段落は三段論法だが、この段落は倒叙法、あの段落は例示でいくというようになります。
  また、それぞれの文章の塊(文、段落、段落群、節、章、篇など)のなかに、中心となる語群、文、段落…などがあります。自分では意識しないでつくった文章にも、客観的に眺めると、中心と縁辺、結論(本論)の部分と説明・補足の部分があります。
  もちろん、どの部分に中心的な重みを置くかは、読み手の価値観や好みによって違いが出ます。が、客観的・文法的には、書き手や読み手の価値観や好みと無関係に、中心と周縁が決まってきます。したがって、書き手は極力、文法上(文章構成法上)の中心と自分のメッセイジの核心とを一致させる努力をしなければなりません。
  そのためには、草稿以前のメモとして、紙にか自分の頭のなかに中心となる語(文)を書きとめておき、それを伝達=説得するために、これこれの材料を配列するという作戦を考えておかなければなりません。

  このような文章の全体的な構造を考えられるようになる、これが当面の目標です。今はできなくても構いません。これができるようになるためには、個々の部品がどういう内容であるかを正確に知って位置づける必要があるので、まず個々の部品となるひとつの文について内容を判断する練習にいきます。

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