知のネットワークをめざして

フィールド

2020年8月
  私は15年くらい前からブログやホームページ作成を手がけています。ある程度専門的にウェブデザインをするようになっています。現在では、世の中の進歩に背を向けて、ブログなどphpプログラムはやめて、原始的なHTMLだけでウェブサイトを編集しています。

  ウェブデザインを始めた頃、日本のウェブサイトの内容は未熟で、私自身の情報検索はほとんど海外のサイトでおこなっていました。日本のネット情報システムがどうにか充実したものになってきたのは、せいぜいこの8年ほどのことです。
  私は、はじめのうち、インターネット技術に裏打ちされた高度な「知のネットワーク」が発展するに違いないと期待していました。
  ところが、SNSとしてインターネットが発達してくると、「情報の大衆化」も同時に進行して、かつて50年ほど前にテレヴィジョンが発達し始めた時代のようになってしまいました。芸能情報やゴシップが人気を集め、はてはIT時代特有のフェイク情報、他者への中傷、罵詈雑言などが溢れかえる事態になってしまいました――世界中で。
  それが政治や文化などに深刻な影響を与えているようです。  あの合衆国大統領トゥランプのトゥイッターの卑劣で低次元、乱暴な内容を見れば、事態の深刻さが理解できるでしょう。SNSがデマゴギーを拡散・深刻化さているのです。
  とはいえ一方で、欧米の若年層が気候変動・環境問題や人種差別への批判や政府の政策変更要求などの運動では、若者たちがSNSをつうじて連帯したり、批判精神を磨いたりしている傾向が目立ちます。そういう文脈でアメリカでは最近、SNSがむしろトゥランプ政権を追いつめる方向で作用しているとも見られています。

  ところで、ウェブ時代の新潮流として動画サイト記事が隆盛となっています。私の狭い経験からすると、自然科学――ことに天文宇宙論や古生物学、生物学などが多いようです――で高レヴェルの作品・アーカイヴが目立っています。ただし、動画サイトへのアクセスはサーヴァーとのトランザクション・トラフィックで電力的に後負荷がかかるため、二酸化炭素の排出量を増大させる原因になっているそうですので、わたしはアクセスを控えています。

  もちろん、他方で、きわめて高度な知的情報や文化、芸術情報なども入手できるようになっています。もちろん、芸能ネタ、ゴシップなどに較べれば、アクセス総数はかなり限られていますが。
  そして、私も「知のネットワーク」づくりに参加したいと願って、ウェブデザイン(企画・取材・執筆・編集)に励み、一個人としては相当大量のウェブページ・文字量・画像量を作成・掲載しています。
  そういうサイトの主なものとしては、
  『信州まちあるき』:信州の観光地や名所を訪ね、美しい景観を追いながら、その歴史や地理、文化について取材し思索するサイト。
  『映画に乾杯!』
  :映画の物語をおさえながら、描かれた事件やできごとの社会的背景を分析し、映像物語の背景にある歴史や文化などを社会史的視点で分析するサイト。映像社会学という研究分野の方法論を探る。
  論文集『世界経済における資本と国家、そして都市』
  :中世から近代まで、世界市場的文脈でヨーロッパ諸国民国家の形成過程を考察する学術論文サイト。資本主義と世界経済についてパラダイムの組み換えを提案する。
があります。

   上記のうちあとの2つは Open University (自由公開大学講座)のような情報発信をめざしたアカデミックな内容です。読んで楽しんで理解してもらえたら、あなたは大学院クラス以上の知的レヴェルにある人です。
   このサイト『知の彷徨者さまよいびと』は、それらのウェブサイトを補充するためのもので、私自身が世の中のあれこれ――世相、社会科学や自然科学、歴史、文化などについて――の事柄、問題について想い悩み、考察している内容を、かなり率直に書き記すものです。
   それらはもちろん、私見であり、きわめて一面的な内容ですが、人びとがウェブ世界でそういう知識の断片を集めて批判・検討し、視野を広げていくようになれば、と願っています。
  ただし、私はペシミストです。というよりも、研究の結果、「文明」「歴史の進歩」とか「人類社会の発展」なるものが、地球環境・生態系の破壊(乱暴な組み換え)であって、人類は愚かで貧富の格差や階級敵対を解消することはないという見解を固めることになりました。ウェブ世界も含めた現代文明は地球環境や生態系の均衡を破壊し、やがて滅びてしまう可能性がかなり高いと考えています。私も含めて人類はあまりに愚かで、現代文明を変えることはできないだろうと思います。
   しかし、たとい滅びるとしても、最後まで知的な格闘や苦悩を続けるべきだと信じています。