|   6月半ば、梅雨の時季、晴れ間を縫って安楽寺を訪ねました。信州では、晴れればこの時季の陽射しが1年中で最も強いのです。雨上がりには大気は適度な湿り気を帯びているので、風物の色彩が一段と鮮やかになります。
 とりわけ植物の葉は、輝きを増しています。
 
 参道脇の池では蓮の葉が成長して、水面を覆い隠すようになっています。あと1か月もすると、蓮の花が咲き始めて、池を飾ります。
 カエルたちは産卵を終えているせいか静かです。池のなかには無数のオタマジャクシが泳ぎ回っています。やがて成体になると、やかましく鳴くのでしょうか。
 
 寺の裏山では、枝や葉を繁らせた樹林が木陰を広げたせいで、天地の明暗の差がひときわ対照的です。
  ▲墓苑の周囲の森
 ◆本堂の内部◆  さて、この日は日曜日で来訪者が多いことから、本堂は開けてありました。内部を覗いてみました。なかなか由緒ありそうな須弥壇が設えられてあります。
 縁日や祭礼などには、多くの檀徒や信者などが集まるのでしょう。また、座禅の修行に訪れる僧や檀徒も…。
 そんなことを想像してみました。
 ◆八角の仏塔の意味は?◆  八角三重塔を仰ぎ見ると、まるで後光が射すように放射状に配置された垂木は二重になっています。庇(裳階)を支える肘木などの組物も繊細で見事の一言に尽きます。
 
 「美しく放射状に広がる垂木」というものは、塔の断面が六角形ではぎこちなく、八角形でないと実現できないはずです。
 仏塔というものは、釈迦の遺骨を納めた舎利殿だということです。すると、光のように放射する線を垂木で演出するというのは、きわめて巧みな建築思想です。
 
 そして、美しさと強度確保の両方の観点から、垂木は二重にしてあります。二段目の垂木が一段目の垂木の中ほどまで伸びているのです。
 このことによって、放射する光の線の威力=美しさが層倍されるのです。
 いつまで眺めていても飽きません。
 
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