◆すいが広場の交流センター◆

喫茶軽食コーナーもある

  参道の最期の石段をのぼった右手（西側）に「すいが広場」があります。広々とした芝生や和風庭園、水路や池と水車のあって、心地よい休憩地となっています。
  前宮の歴史や文化、周辺の遺跡や文化財、散策路などを案内する資料を展示するとともに、喫茶軽食コーナーがある休憩・交流場所です。
  以前は耕作放棄地や荒蕪地となっていましたが、最近建設されました。前宮を取り囲む小町屋集落や鎌倉道を散策するときには、ここによって地図や資料を観ることをお勧めします。

資料展示コーナー

◆小町家の中小路を歩く◆

  前宮本殿への参道東脇に「小町屋の中小路」を説明する立札が立っています。そこが中小路への分岐点で、畑作地のなかを水眼の清水の流れに沿って下っていく畔のように狭い小径が「小町屋の中小路」です。室町中期までは、この小路に沿って、諏訪大社上社の最高位の神官である大祝氏の家臣団の屋敷が建ち並んでいたと伝えられています。その頃には道幅はもっと広かったかもしれません。
  現在は「小町屋」という綴りですが、古くは「最も古くからの屋敷街である」という意味で、「古町屋」と表記されていたのかもしれません。あるいは干沢城の城下街は、城跡がある尾根の西麓の谷間から南を経て尾根の東側におよぶ地帯にあって「大町」と呼ばれていたので、それに対して前宮の近隣を「小町屋」と称したということかもしれません。
  昭和前期（戦前）までは、一般民衆はこの小径を通って前宮本殿に参詣していたそうです。

中小路脇の水路の畔に祀られた水神社の祠

  中小路の説明板の近くには水神社の祠と石塔が立っています。水眼の流れの近くには何か所も水神社の石祠が建てられていたようです。農業用水としての水眼の清水の恩恵に感謝するだけではなく、水神の怒りを鎮めて大雨や雪解け季の増水や氾濫、土石流などを避けるための切なる願いが込められているのでしょう。

ケヤキの老巨木の根元に置かれた柏手社の石祠

柏手社の東にある祝神社の祠群。手厚く祀られている

  立札から中小路を歩き下っていくと、途中までは小路の東側は段々畑や草地になっています。江戸時代はじめには武家屋敷街はなくなって土に埋もれてしまっていて、段々畑として開拓されたのでしょう。小径沿いの急坂の段差は石垣で支えられています。
  中小路の東脇の段々草地の大きなケヤキの古木の根元に柏手社が祀られています。由緒がありそうな祠ですが、ポツンの単独で祠が置かれています。ところが、同じ段丘草地の40メートルほど東に、４本の小さな御柱に囲まれた祝神社があります。この２社については、別の機械に探訪することにします。

石垣に沿って東に小路から伸びていく細道

東に見える尾根の奥には干沢（樋沢）城跡がある

左上写真の赤いトタン屋根の入母屋古民家

  さて、前宮がある谷間の丘陵の東側には杖突峠から張り出した尾根が伸びてきています。中小路からも東に眺めることができます。この尾根の上には、15世紀半ばに大祝氏が築いた干沢城の跡があります。
  その頃の城下町は、この尾根を取り巻くように、ここから安国禅寺の辺りまで半円形に延びていたものと想像できます。そのなかでも前宮近隣のこの集落は歴史が古く、格式が高かったはずです。それゆえ「古町屋」と呼ばれていたのではないかと想像するのです。
  尾根上の城跡と国道152号が通る平坦地との標高差は50メートルほどですが、中小路の中ほどとの標高差は20メートルほどです。
  中小路の東側の集落には古民家が目立ちます。無住化や高齢化で、なかには荒廃が進んだものもあります。貴重な文化財なので、早急な手当てが求められます。

  中小路の西脇に並ぶ屋敷は、かつては上社の神官団の屋敷だったのではないでしょうか。戦国時代以降、江戸時代にも恵まれた地位・格式にあったので、子孫が代々屋敷地を保全することができたのではないかと思われます。
  その家並みは、中小路と神願門跡から十間廊にいたる石畳の小径の間に位置していて、今でも漆喰土蔵などが保全されています。

神願門跡から十間廊にいたる石畳小路の家並み