春、晴れると、信州上田の陽射しはすこぶる強い。
  三重塔の撮影は、上を仰ぎみるアングルでの撮影となる。そのため、光が強すぎてハレーション気味にならざるをえない。

  普通のデジタルカメラでは、絞り機能やフィルターが使えないので、明暗のコントラストがきつくなる。そのため、庇の下など、日陰部分の細部は暗闇に溶けてしまう。
  その一方で、陽射しがもろに当たる先端部は、空に溶け込んで輪郭が甘くなってしまう。

  つまり陽炎のなかで撮影したようになるわけだ。

  しかも、光量はカメラのマイコンが勝手に判断してしまう
  そこで、カメラを騙して使うしかない。
  そんなわけで、あまりよい画質の写真は撮れなかった。
  暗くなっている細部をもっと知りたいという人は、パソコンの画面に対して、目を上に持っていって、やや上から見てほしい。そうすれば、明度がより大きい画像になるから。

  それでも、被写体が素晴らしいので、三重塔の美しさや典雅さ、結構のみごとさなどはそこそこ伝わるだろうと思う。

  信濃国分寺の三重塔は、ここから西におよそ10キロメートルほど西にある青木村の大法寺の三重塔(鎌倉末期から室町初期)を模して建築されたという。

  詳しくは、大法寺の記事で述べるが、初層のつくりが大きく、その分屋根の反り上がりが大きいので、安定性と雄大さが増幅するのだと言われている。まるで鳳(おおとり)が羽を広げたような印象なのだという。

  ところで、私自身の私見では、国分寺の三重塔は、設計を微妙に調整して、大法寺の塔よりもやや繊細に造られているようだ。微妙なバランスを重視したように思う。
  雄大さや迫力を若干犠牲にして、より優美さを求めたのではないか。それというのも、少し時代が下って洗練や繊細さがより求められるようになったからだろう。