国道19号沿いに与川の木曾川への注ぎ口からおよそ6キロメートル北に進むと、柿其渓谷への入り口があります。ここから木曾川沿いに旧中山道は国道と並行します。今回は、柿其橋から木曾川峡谷を俯瞰して、木曾川とと柿其川との合流点、中川原峡の美しい景観を楽しみます。


南寝覚みなみねざめと呼ばれる美しい峡谷◆



柿其橋から中川原峡を俯瞰する: 木曾川と花崗岩質の岩壁



▲柿其橋の東袂: 峡谷の上を往く高架橋梁は国道19号


▲柿其橋の西側の眺め。右側の樹林は八剱神社の社叢


▲柿其橋から中川原峡を見おろす


▲段丘崖の上に鳥居と石段がある


▲橋の下流部の眺め。流速が大きくなるので、岩は砕かれ小さくなり、角が丸みを帯びていく。

■中川原峡■

  国道19号を与川の木曾川への注ぎ口から2キロメートル余り北に進むと「柿其入口」の交差点があります。ここで左折して、木曽川左岸を国道と並走する旧中山道を歩き、柿其渓谷の入り口をめざします。およそ400メートルで柿其橋の東袂にいたります。
  柿其橋は、柿其川と木曾川との合流地のすぐ南に架けられた橋梁で、眼下に中川原峡を俯瞰しながら、柿其渓谷に分け入る入り口です。この辺りで木曾川の勾配は緩やかになり、流れが大きく西に蛇行します。
  蛇行の湾曲部の頂点に柿其川がぶつかるように合流するので、木曾川の浸食作用がかなり減殺されるため、花崗岩質の両岸が完全に破砕されることなく、亀裂が入ったまま、小さな岩棚や岩塊群として残されています。明るい白灰色の花崗岩の塊が並ぶ姿は「南寝覚」と呼ばれています。


道(往来)が交わり出会う場所は神仏の居場所

■泥濁りがない清冽な流水■

  景観を撮影した日の前日には流域で雨が降りましたが、写真のように、ほとんど泥濁りは見られません。これが木曾川の特徴なのです。
  木曽地方の山々は太古に地下深いところでマグマが冷えて固まった花崗岩の地殻が隆起して形成されました。花崗岩は主に長石と石英、雲母などの直径数ミリの結晶から合成されていて、細かく砕けても粘土成分の粒子にはなりません。ほとんどが白い長石や透明なガラス質の石英の結晶粒子で、わずかに雲母の黒色結晶が混じっています。鉄やナトリウムの酸化物のような泥色(赤褐色)のもとはありません。
  したがって、水に溶けても褐色の泥色は帯びないので、透明性の高い青緑色ないし翡翠色の流水となるのです。そういう水の色と白灰色の花崗岩の塊からなる岩壁は、美しいコントラストをなしてみごとな峡谷景観をもたらすのです。


橋の直下の眺め

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