◆かっぱ亭とその近隣をめぐる◆


かっぱ亭の西向きの窓から:隣家の庭の花壇は野草と溶け合っている


▲隣家の庭と花壇、背後に河岸段丘崖が迫る


▲前庭の橋の地位散水車、庭の日傘とテイブル。かっぱ亭のシンボル。


▲沓脱ぎ場から面を振り返ると


▲古民家の室内は真昼でもかなり暗い。外の明るさがまぶしいほど。


フローリング洋間の様子


畳敷き日本間から庭を眺めると・・・


前庭と茅葺古民家が重なる景観


軒端に揺れる風鈴


かっぱ亭の斜向かいの茅葺古民家


吊り橋茶屋脇の茅葺小屋

◆風鈴の音に惹かれて・・・◆

  大出めぐりの取材をしているうちに昼時となりました。涼やかな風鈴の音が聞こえてきた先を見ると、おりよく古民家かっぱ亭が目の前にあって、営業しています。ここで昼食を兼ねて一休みすることにしました。
  かっぱ亭は、この集落の古民家をそのまま生かして、地元独自の雰囲気のなかで、地場の魚や野菜類を材料にしてサーヴィスを提供しているレストラン―― restaurant 本来は「憩う場所、癒しの場所」という意味――です。


縁側天井に吊るした風鈴

花桃の陰で水車は回る

  大出吊り橋を渡り終えると、まっすぐ目の前にその古民家と前庭が見えてきます。
  前庭の境界を村の用水が流れ、その清冽な水で回る小さな水車、その背後のテラステイブルと大きな日除け傘。これが、かっぱ亭のヴィジュアル(視覚的)なトレイドマーク・サインです。
  茅葺古民家は、昔の生活様式に適合した造りです。大きく軒の深い屋根がかぶさっていて、森のなかのように夏の室温がかなり涼しいのです。家の中心部の床で夏でも囲炉裏を焚く場合もありました。その煙が循環して上昇し、外に排気されるように隙間が多いのです。囲炉裏から立ち上る温熱と煤で屋根裏は炭化し、耐久性をもちます。
  現在のように山林から薪や柴を採取せず、囲炉裏もない生活スタイルでは生活が難しい構造です。しかも、茅屋根の吹き替えは家を建てるほどに高価です。葺き替え用の屋根材のための茅場もありません。現代の生活のなかで古民家が取り壊されていくのは、いわば仕方のないことなのです。
  古民家を現代の商売や生活に取り込むためには、家の隙間を塞いで、暗い室内を必要に応じて明るくする工夫と改装が欠かせません。もし、古民家に入ったら、そんな視点で眺めてみてください。

  さて、私は信州サーモンを刺身としてあしらった丼を注文しました。信州サーモンは、信州の淡水のなかで育つサケとマスのハイブリッドなのだと聞いたことがあります。脂がのってやさしい味の高級魚です。
  この店の雰囲気、佇まいが気にいったので、私は店主にこのウェブサイトへの採録の許可をいただいて、この記事を編集しています。
  私はこの店の雰囲気を宣伝臭く取り上げるつもりはなく、あくまで大出集落の好ましいひとつのシーン、景観として描こうとしています。

  そこで、かっぱ亭の近隣にある懐かしく美しい風景を取り上げておこうと思います。


小さいけれど端正な大出観音堂

観音堂の向かいの家の庭にある水場

  すでに大出集落の名所については記事に書いてあるので、それにしつこく追加する形で、「これは見ておくべき!」というシーンをおススメします。
  まずは、かっぱ亭の斜向かいの古民家、私有地なので前庭に立ち入って見ることができないのが残念ですが、通りからでもその美しさはわかります。
  次いで、近くの小さな観音堂。かっぱ亭の前の道を90メートルほど西に歩いたところにあります。観音堂の向かいの家の庭端には、村用水から水を引き込んだ水場、洗い場があります。
  そして最後に大出公園の茶屋下から眺めた茅葺の小屋のシーン。こんなシーンをぜひ堪能してください。かっぱ亭の料理の味わいもぐっと深まるというものです。

▼通の集落は鉄橋から400メートルほど北に位置しています▼

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